事業性の低さが課題の一つ

小規模多機能型居宅介護は、平成18年の介護保険法改正を機にスタートしました。発足当時は、定額で訪問介護とショートステイ・デイサービスを自由に組み合わせることができ、自宅と事業所のどちらでも介護が受けられることで注目を集めました。利用者が介護サービスをオーダーメイドできるということは、本人だけでなく家族の負担も大きく軽減されます。宿泊を希望すれば迎えに来てもらえるし、これまではケアマネージャーのスケジュールで動いていた訪問介護も、利用者のニーズに合わせて提供することが実現しました。
一方、スタートから年数が経過した小規模多機能型居宅介護ですが、当初考えられていた結果とは裏腹にあまり浸透していません。その主な理由には、事業性の低さが挙げられます。従来の介護サービスでは、一つ一つのサービスに料金が発生し、ケアマネージャーが介護保険の範囲内でスケジュールを立てるのが基本でした。小規模多機能型居宅介護も料金が定められていますが、あくまで利用者の要望に合わせてサービスを行うというスタンスなので、サービス同士の境界が曖昧になってしまいます。本来なら別料金のサービスでも、利用者からついでにお願いと言われると断れない雰囲気になることが多いようです。また、スタート当初は通所がメインでしたが、宿泊を希望する利用者も多く、看護師や夜勤スタッフの確保ができないという事業所も増えてきました。このサービスを活性化させるためには、サービスのマニュアル化やスタッフの教育など、いろいろな課題が残されています。